下川町 木材循環の試み 伐った木は無駄なく使う その4

下川町は木質バイオマスエネルギーの利用を推進している町でもあります。

下川町の公共施設の暖房のうち、2011年度現在、
50%を木質バイオマス燃料でまかなっているということでした。



下川町森林組合の木材加工工場の敷地内には、木質バイオマスボイラーが設置されています。




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加工工場から出た木の粉を、
ペレットより大きい個体のプリケットに成形固化して燃料として使います。



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下川町では、町内の道端や空き地に繁る「イタドリ」などの生長量の多い植物を刈り取って、
やはり木質燃料「バイオコークス」の開発、実践にも取り組んでいるそうです。





そして、最近大注目され始めた、
トドマツの葉から抽出したトドマツオイルも、下川町森林組合の敷地内で作られていました。
ここで、純度の高いトドマツオイルをつくっています。


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よく言われる「フィトンチッド」という言葉は、
ロシア語で「木が放つ、自己防衛の免疫物質」という意味があります。
森林の中で感じる爽快感は、このフィトンチッドに依るところが多いということ。

トドマツの場合は「ボルネオール」という成分が多く含まれていて、
トドマツオイルを実際にかぐと、優しく爽快な香りがします。
この香りにはリラックス効果があり、防虫と消臭効果、特にアンモニア防臭に効きます。


木の免疫物質が人によいものならば、もちろん、人は木と共生できるのでしょう。




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下川町 木材循環の試み 伐った木は無駄なく使う その3

下川町森林組合の木材の加工工場。

見学した日はカラマツの羽目板(天井、壁に貼る板)とカラマツの床板の加工、
それから、カラマツ集成材の天板をサイズカットする作業をしていました。

ちなみに集成材を専門につくっている工場は別の場所にあります。



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一度に通すと、厚さ、幅、実(さね:板と板を付け合わせる部分の細工)が同時に完了する、
「モルダー」という大型の機械が数台あり、それぞれの機械に人がついて、
木表木裏を元口末口を一つ一つ目で確認してから通していました。

フルオートメーション化されている工場も増えてきているようですが、
人が木を見て触れる場は残って欲しいものです。



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カラマツの床板。厚さ15ミリ、幅13〜15センチくらい。
カラマツ板の艶のある赤味がかった木肌は美しいです。




カラマツの集成材。



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そして、この加工工場のモルダーから出た「オガくず」は集塵機で集められ、
敷地内のある場所に送られます。



その先は「オガくずを炭化させる」工場です。



オガくずを黙々と見守り管理する人と、この工場の闇と少ない開口部から差す光が印象的な空間。
私は見た事はありませんが、炭坑の中の、あるシーンに近いかもしれません。

この人は、炭化を始めたオガくずの山に火がつかないように見張る役目。この作業は24時間体制です。



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オガくずは、堆肥をつくる場合と同じように、下の方からゆっくり炭化していきます。

オガくずが積まれている場所の床には、いくつかの風道があり、
燃焼に必要な空気はそこから供給され、出た煙もそこを通って排気されます。



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出来たオガくずの炭。


「しもかわ炭素」として流通しています。
ミネラル分が豊富で、土の通気性や透水性も改善させる資材として好評のようです。



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伐った木は無駄なく使う その4に続く




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下川町 木材循環の試み 伐った木は無駄なく使う その2

下川町森林組合の主力木製品のひとつ「燻煙枕木」。

本物の中古枕木には、クレオソートなどの防腐薬剤が浸透しています。
使った場所付近は防腐薬剤の影響があるかもしれないと考えれば、
ガーデニングや家庭菜園の縁どりなどには、この燻煙枕木の方が適していると思います。
特に今の時期は、供給が追いつかないほど売れるそうです。

燻煙枕木はカラマツを木酢液に数時間漬け込み、その後、燻煙釜に入れて燻すという、
結構な手間と時間をかけて作られていました。




処理される前のカラマツ材。
直径30センチくらいの木が枕木材として製材されて桟積みされています。


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燻煙処理が終わった燻煙枕木。
正にチャコール色、木炭色になりました。


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この装置は、木材を木酢液に漬け込むためのプールと、
木材をプールの中に沈ませておくためのプレスのような機械です。
押さえないと木は水に浮いてしまいます。


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木酢液に漬けている木材を見せていただきました。
辺りに木酢液の酸っぱい香りが漂います。
この木酢液は木炭を焼いている時に集めたもので、100%下川森林組合製。
木が木酢液を吸って減るので、定期的にこのプールに足しているとのこと。


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何とも例えようのない色ですが、
日本の伝統色に中では、鶯茶色(うぐいすちゃいろ)が近いでしょうか。
渋味を感じる色です。


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木酢液のプールから上がると、燻煙釜に入れられます。


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伐った木は無駄なく使う その3に続く




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下川町 木材循環の試み 伐った木は無駄なく使う その1

いよいよ下川町と下川町森林組合では、木から何を生産しているのか、をお伝えします。


大きく分けると3つの分野があります。

1、カラマツ トドマツ シラカバの集成材をつくる部門
2、小径木を使った木炭づくりと燻煙材をつくる部門
3、樹木のエキスをつくる部門





今回は2、木炭小径木工場を見学させていただきました。


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場内に積まれたカラマツ、トドマツの小径木。皆、除間伐されたものです。
これらがどういうものになっていくのか。


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直径10センチくらいの小径木を炭に炭にする釜。
釜の内部は幅2.7m 高さ2.7m 奥行き3.6mくらい。
壁には耐火煉瓦が積まれ、天井と扉はセラミックで塗込められています。


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セラミックで塗込められた厚い扉。
1000℃前後もある温度差に耐え、伸縮も大きいので、割れはあちこちにでています。
一番下が通気口。真ん中は焚き口。


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釜の床に積もった灰。
この灰は集められて使われます。売る程はないそうです。

ミネラル分が豊富なので、畑に撒くとよい肥料になります。
それから今は重曹を使う方が多いと思いますが、
山菜のアク抜きは灰汁を使ったほうが美味しいと言います。
灰のミネラルが付着するからなのでは。



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炭焼き釜の後ろでは、炭焼きすることで発生する煙蒸気を集めて蒸留し、
木酢液(もくさくえき)を採っています。


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炭焼きの煙には大量の水蒸気とタールも含まれているので、配管はタールで真黒。
そして右の配管の切り口から水蒸気が勢いよく吹き出しています。


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この炭焼き釜で焼いた炭。
長さ30センチくらいに切って箱詰めされます。


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下川町でつくっている炭は「松炭」
松炭の特徴は火付きがよくて、すぐに高温が得られること。そして灰が少ない。
ただ、火持ちは「ナラ炭」などの広葉樹の炭より短いようです。







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そして、下川町森林組合では、
薪ストーブを愛用する方、垂涎の、ミズナラの薪もつくられています。
ミズナラは自然に生えてきたもので、除間伐する木のうちにいくらか混じるだけなので、
供給量は時期によりまちまちのようです。





「薪」と「炭」


製造するためにエネルギーを使う「炭」を敢えてつくること意味とは。


薪にくらべて炭のよいところは、
煙や炎がほとんど出ず、空気量で火力調整しやすいし、
炭は熱線だけでなく、赤外線と遠赤外線も発しているので、物の内部にまで熱が伝わります。
これらの特徴が調理の火として都合よく、今でも使われ続けているのです。

そして、炭をつくる工程で、
ただの木材だったものが、「炭」「木酢液」「灰」など、
それぞれ性質がはっきりした扱いやすい物に分解されたと理解しています。

それら全てが有効に使われるならば、敢えてエネルギーを使ってつくる価値があるのです。



伐った木は無駄なく使う その2  に続く





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下川町 木材循環の試み 森林施行 その3

下川町は、全町の面積が64,420ヘクタールで、そのうち約90パーセントが森林。まさに森林の町です。
(1ヘクタールは100m×100m=10000平方メートルの面積)

しかし、下川町の森林のうち、約85パーセントの49,024ヘクタールが国有林。
国有林は中央省庁である林野庁(森林管理局)が管理するので、
国全体の指針に沿い、画一的な運営になりやすく、
地域ごとの特徴や実状、用途を汲み取り活かしていくことが難しいようです。

地元の人たちの意志で運用経営できる民有林は8,409ヘクタールで、
そのうち、町有林経営面積は4,205ヘクタール(分収林260ヘクタールを含む)のみです。

下川町と下川町森林組合では、そのけっして大きくない町有林を、
毎年50ヘクタールの植樹造林をして、60年後に伐倒する。
つまり、50ヘクタール×60箇所=3,000ヘクタールで一つのサイクルを作る。
もちろんその営みは延々と続けていく。
この循環していく森林施業(法正林思想)を町有林経営の基本としているそうです。

森林施行の方向性、規模やサイクルを明確につくり、実践していることで、
その経営に見合った人材の確保や設備投資が定期的にでき、
製品の種類や量、新製品の開発などの計画や調整がしやすくなるので、
その結果、木材の安定した供給や品質確保もできるようになります。

そういうことならば、使う側も安心して下川町の木材を買うことができます。

地味ではありますが、各方面の方々に確実に支持されるのは、
下川町のこの取り組みは、いつの時代にも左右されないであろう、
地域の本質、生産する木材の本質に順じた意志と行動であるからに他なりません。





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下川町 木材循環の試み 森林施行 その2

今回、除間伐されたトドマツ、カラマツ、シラカバはそれぞれ2間の長さに玉切りし、
等級分けをされて、林道端に積まれています。この後、製材所に運搬し加工されます。


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林道端に広い場所を確保すれば、大型機械を使って効率よく丸太を扱うことができます。

ここで活躍していたのは通称「グラップル」という大型機械。
アームの先が丸太を同時に数本つかめるハサミ状になっていて、
チェーンソーで枝払いされた長い丸太を、玉切りするために一列に並べています。


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下川町の除間伐は「定性間伐」。良材を選んで残し、他は間引くという従来どおりの方法。
定性間伐した林は除間伐した後も林の中に大型機械の通る余地がないので、
主伐の伐倒作業、伐倒木の搬出作業はまた人力、小型機械に頼ることになります。

林の中に作業スペースや通路が確保でき、大型機械を使う余地の増える「列状間伐」という方法もあります。

列状間伐の解説



ちなみに林業用の大型機械には、
伐倒、枝払い、玉切り全てこなす「ハーベスタ」
枝払い、玉切りをする「プロセッサ」
悪路を進めるキャタピラー積込み運搬車「フォワーダ」
などがあります。




チェーンソーを使って玉切りの作業。


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除間伐の現場、サンル地区から場所を移して、トドマツの試験林を見に行きました。

渓和地区のトドマツ人工林で、植樹密度の試験をしている場所。
1960年に植樹とありますから、樹齢は50年を超えています。
間伐されていないので、一本一本が細いトドマツの林。

下川町では60年を1サイクルとして木材循環させる仕組みづくりを推進しています。
木材の生産に関わるいろんな実験をして、この地域に合ったやり方を模索しているようです。


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木は植樹して木材として利用できるまでに数十年の長い年月がかかります。
近年はその間に木材の利用のされ方もいろいろ変わってしまって、
日本の林業は翻弄され、衰退してしまったかに見えます。

でも、人の生活にとって樹と木材の魅力や必要性は、以前にも増してあると感じます。




そして、途切れることなく続けられる植樹。


トドマツ試験林の隣に植樹された、カラマツの幼木。


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次回はいよいよ、下川町では木材からどんな製品を生みだしているかをレポート。





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下川町 木材循環の試み 森林施行 その1

北海道上川郡 下川町。

ご存知の方も多いと思いますが、
地域資源である木を永久的に循環させる「循環型森林経営」を推進している町です。

その下川町で、木材がどう扱われどんな工夫がされているのか、見学をさせていただきました。



まず、町営人工林の除間伐作業をしている現場です。
今回見学したのは、サンル川の上流にあるサンル地区というエリア。
トドマツとカラマツの植林地で、そこに混じったシラカバも除間伐されていました。


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左側手前の立木でほとんど葉が付いていないのが「カラマツ」
カラマツは「落葉松」と書くことでもわかりますが、針葉樹では珍しく冬は落葉します。

左側奥の葉が濃く繁っているのが「トドマツ」

そして道を挟んだ右側に初々しい緑の葉を付けているのが「シラカバ」
シラカバは植樹したわけではなく、勝手に生えてくるそうです。






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まだ除間伐されていないカラマツ林。




そして今回、除間伐がされたカラマツ林。


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除間伐をすると、
このように木と木の間に適度な隙間ができることで、陽射しが行き渡り、
カラマツの枝張りや根張りがよくなり、幹を太らせることができます。




除間伐された後、一定の長さに玉切りされ積まれたカラマツ。
どの丸太もここに植林されてから同じように20〜25年経っているはずですが、
それぞれ生えていたところの環境差や遺伝個体差で、これだけ成長量に差が出てしまうのです。

こちらは曲がっていたり細すぎたりするので、粉砕してチップにされる丸太の山です。


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このトドマツの丸太の切り口には数字がかいてありますが、丸太の直径を記しています。
この径級付きの丸太は間伐材ですが良材なので建築用として、間柱、貫、板などに加工されます。


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コケ生したトドマツ丸太の樹皮。
トドマツは水をよく吸い上げ、養分も豊富らしく、いろんな生物の源になっているようです。
ブナの樹皮に似ていると私は思うのですが、同じようにブナも水をたたえる木という印象があります。





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